ここからちょっとだけグロくなるので、そういうのがダメな方はVol.3へどうぞ。
【手術当日 術前】(7/12)
14:11amごろ 手術室に到着。移動の台から、手術の台へと再び移動する。日帰り手術センターは独自に手術室を持っていて、そこで手術をしてもらう。手術室は、さっきまでいた個室の、「ほんのお向かい」にある。
14:13amごろ 手術室にBGMがかかっていることに気付く。森高千里の「ハエ男」だ! 鶴田真由似の看護士さんが、ニッと笑って「今日は森高にしてみました」
14:15amごろ 「手術中、何かあった時のために」と、カスタネットを握らされる。何かあったら鳴らせと言うのだ。その後、病院がきれいになったねなどといった世間話をして、看護士さんとも打ち解け、だいぶリラックスしてくる。
14:20amごろ 再び安定剤を打たれる。さっきは右肩に打たれたと言ったら、今度は左肩に。先ほどと同じく吐き気とめまいに襲われたが、腕に巻いた血圧計で血圧を調整してもらったら瞬時に楽になった。
14:22amごろ 手術室に先生登場。ちゃんと、さっき外来の診察室で会ったあの先生だ(知らない間に別の医師が手術をしてましたなんていったら、たまらないからな)。先生から「今日はお願いします」 先生のほうが看護士さんたちよりも年齢が下らしく、全然エラそうでないので、なんかいい雰囲気だ。とか思っているうちに、わたしの顔はあっという間に、鼻と口だけを残して厚い布で覆われてしまった。目には開かないようにとテープが貼られ、胸には心拍計を取り付けられた。わたしはカスタネットを、音の鳴らぬように握り締めた。手術室には森高の甲高い声がうたっていた。
【手術当日 術中】(7/12)
14:25amごろ〜15:35amごろまで 手術。局所麻酔のため、意識ははっきりとある(ボーっとしるけど)。まず、鼻の両方の穴に直接、麻酔の注射を2本。予め外来で麻酔をしたためか、ほとんど痛みがない。先生が何か動きをとるたびに、看護士の竹城さんが、「いま、注射打ったからねー」などと大きな声で、実況してくれる。わたしはそのたびに「はいー」と上ずった声で、返事していた。その間、鼻毛は手早く切られた。しかし物静かな先生が、「じゃ、切ります」と言った時は、少し緊張した。まずは鼻中隔が湾曲したために狭くなってしまった鼻の穴のほうから慎重に切り取った。当然骨を削いでゆくのである。やはり、この作業に最も時間がかかる。曲がった軟骨が取り除かれると、今度はトンカチのようなものでまだ曲がっている鼻を真っ直ぐにしようと、思い切り叩かれる。これでだいぶ真ん中に寄った感じだ。この時、もちろん痛みはないが、眼球の下によく響き、骨が割れてしまうのではないかと恐怖感が起こる人もいるらしい(でも大丈夫だ、大抵は)。森高がまだうたっている。鼻が整うと、次は、慢性鼻炎のために腫れてしまった粘膜を切り取る。これは、破砕と吸引を一緒くたに行えるメス(シェーバーシステム)を使い、手早く済んだ。先生に「ためしに鼻で息してみてください」と言われてしたら、ほんとに息が吸えた。良かった。成功だ。そして最後、両方の鼻の穴に、それぞれ4本ずつ、ガーゼを詰め込まれた。詰め込まれながら、「結構入るもんだなあ」と妙なことに感心した。
【手術当日 術後】(7/12)
「まぁ、こんなもんでしょ」の先生の一言で、手術終了。わたしも「ありがとうございました」と言えるくらい、意識がはっきりとしている。結局カスタネットは一度も鳴らさなかった。厚い布を取ってもらい、胸に貼っていた心拍計もみんな剥がしてもらう。そこでわたしはすぐさま先生に頼んだ。
「先生、取った軟骨みせてください!」
飄々とした風な先生は、「あ、見たい?」と言って、軟骨を見せてくれた。それは、螺鈿にも紛うほどの細やかな光を放ちながら、たしかにCの字(Sの字の人もいる)を描いて湾曲していた。
15:35amごろ 手術台から再び、日帰り手術センターへの移動のための台に移る。自分で移るだけの体力は充分にある。鼻にガーゼが大量に詰め込まれているので、当然口呼吸しかできない。手術室から出ると、看護士さんたちが待っていた。ここで“竹城&真由”は手術室へと戻っていった。
15:36amごろ 移動の台に乗っかったまま、個室へ戻る。すると、母が待っていた。看護士さんたちにペコペコしている。点滴を交換してもらったりして、しばらく個室で休む。母は、先生に呼ばれて別の部屋に行った。その時、母も軟骨を見せてもらったらしい。後の母の感想を聞くと、「ほんとに曲がってたね」
15:50am 先生と担当の看護士さんと母の3人が個室にやって来る。先生が手術の模様をビデオに撮っていたので、それをみんなで見ようというのだ。個室に置かれたテレビで、わたしもベッドで寝たまま見る。小型カメラを鼻に通して撮った、まさに手術のクライマックス(爆 つまり、軟骨を取る瞬間)を見たのだが、それは見事なメスさばきだった。先生、グッジョブ。
16:00am 看護士さんに、パジャマに着替えるよう促される。点滴の針が刺さったままなので、着替えにくく、看護士さんに助けてもらう。持参したTシャツと短パンに着替える。
16:05am 突然、吐き気とめまい。吐き気止めを点滴してもらう。
16:20am 気分が楽になってきたので、今夜泊まる病室へ移動。看護士さんにマスクをかけてもらう。移動中、なぜか寝たフリをする。産婦人科の病棟以外、相部屋が開いていないというので、個室に泊まることに。相部屋だと一泊1,050円のところ、個室になると一泊10,500円になる。母は「まあ、仕様がないでしょ」
16:25am 病室に到着。初めての個室を満喫する暇もなく、ベッドになだれ込む。夕日がまぶしくてウザい。病棟の看護士さんが来て、氷枕を頭にあててくれた。鼻がキューッと閉まるように痛い。鼻血が喉に落ちて、口からどんどん出る。鼻の先に詰められた綿球も、すぐに真っ赤に血で染まる(綿球は頻繁に自ら交換しなければならない)。
16:40am 先生と担当の看護士さんが病室にやってくる。まぶたが重い。先生が母に、ひえピタやら、オススメのマスクやら、買ってくるといいと勧めている。母は真剣に聞いている。飄々とした風な先生が、妙にマスクに詳しいので(付け心地が楽なユニ・チャームの
“超立体”が良いと勧めてくださった)、看護士さんもわたしも、おかしくてたまらなかった。
16:50am 先生と看護士さんが病室をあとにする。母が、「何か飲みたい?」と聞くので、「ポカリ」を頼んだ。
18:00ごろ 夕食。いただきます。メニューは、白米、キャベツの漬物、煮魚(ぶりのあら)、茶碗蒸し。鼻にガーゼが入っているため、咀嚼している間は息ができないのが辛いが、朝食・昼食を抜いてしまったので、できるだけたくさん食べる。食事だけでも疲れるので、休み休み食べる。どれも噛まずに飲み込む。食後は、止血剤と整腸剤を飲む。
18:20ごろ ごちそうさま。出血が止まらないので、じっとする。
19:00amごろ 母が帰る。ポカリや綿球、ユニ・チャームの“超立体”などを買ってきてくれた。
21:00am 面会時間終了の放送が入る。オルゴールのBGMが流れる。舌が血で染まる。綿球を頻繁に交換する。看護士さんが、電気を消しにやって来る。
21:00am〜翌日5:00am 眠れたか眠れないかよく分からないうちに朝になる。長い夜だった。気分は平気だったが、鼻血は止まらなかった。友だちにもらった坂本龍一のCDなんかを聞いていた。夜中に3回くらい、看護士さんが来て、体温と血圧を測っていった。よく分からないうちに、もう、いや、まだ朝だ。